小説『靴十夜』後日譚ならびに後書き

後日譚ならびに後書き

 『靴十夜』というタイトルはもちろん夏目漱石の『夢十夜』から来ている。だが内容も形式も、何の関係もない。

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小説『靴十夜』第十夜

第十夜 パンプス

 風はまだ冷たかったが、そこには春の気配が満ちていた。空は春独特の、あの淡いブルーに晴れ上がっていた。空気は澄み、遠く比良の山並がつづいているのが見渡せた。早春の、何か神聖な清澄さをたたえた空気は、やがて春の野に満ちるであろう生命の、胎動のようなものを秘めていた。

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小説『靴十夜』第九夜

第九夜 防寒ブーツ

 雪が降っている。
 天空から舞い落ちてくる白い花片のように。
 アスファルトの上に舞い降りて、
 音もなく溶けていく。

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小説『靴十夜』第八夜

第八夜 チャイルドシューズ

 朝から降り出した雪は夕方まで降りつづき、辺りを雪国の情景へと一変させていた。店の駐車場にも十数センチの積雪があり、長尾と島中がせっせと雪かきをしているふりをしつつ雪合戦に熱中していた。昼過ぎに銀行へ出かけた店長は、銀行の営業時間が過ぎても戻らず、日が暮れても戻らず、閉店時間まで戻ってこないのは、もはや確実であった。雪の夜とあってか、客の入りはほとんどなかった。店内にはアルバイトの徳長が店番をしていた。

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小説『靴十夜』第七夜

第七夜 デッキシューズ

 年末になると、店にはスピードくじが用意される。お買い上げ一回ごとに1枚引いてもらい、その場で当選が分かるという三角くじである。たいていは宝くじと同じく空くじであるが、中には5,000円のシューズ券がもらえる当たりくじも入っているのだ。このくじを引く権利は店員にも平等に与えられていたので、彼らは社員割引で靴を安く買い、さらにくじを当ててシューズ券をも手に入れることに熱意を燃やしていた。奸智にたけた長尾は、店のコーナーにあるスポットライトでくじをすかせてみるという違法スレスレの荒技で当たりくじの発掘を続けていた。

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小説『靴十夜』第六夜

第六夜 アウトドアシューズ

 夜になると、灯りを求めて虫が店に集まってくる。その日は全員、大量に発生したユスリカ(通称ビワコムシ)の処理に追われていた。床と言わず靴の中と言わず、いたるところに飛んできてはあっけなく死んでしまうユスリカは、この店にとって最大の天敵だった。

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【自作曲】Walk in the Forest

これも昔作った曲をアレンジしたのですが…

Walk in the Forest by ryecroft21 | Free Listening on SoundCloud

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小説『靴十夜』第五夜

第五夜 トレッキングシューズ

 はじめて出会ったのは、本屋で雑誌を立ち読みしたついでに、隣の靴屋に入ったときだった。今までこんなことはなかったのに、一目見た瞬間から、僕の心は君にすっかり占領されてしまった。僕は君の姿を忘れることができなくなってしまったのだ。

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小説『靴十夜』第四夜

第四夜 テニスシューズ

 今日も朝からよく晴れており、東の空には遠く積乱雲が広がっていた。夏休みに入ってからは、暇をもてあましたアルバイトたちが昼間から店に出勤してくるので、店では店員の飽和状態が続いていた。
 そんなわけで、昼間から店に出ても仕事がない長尾と安家は、野上を交えて、昼前から島中の家に押しかけ、庭先でバーベキューをしようとたくらんでいた。

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【自作曲】バトルフィールド

もしかしてライクロフト名義で自作曲を公開するのは初めてかもしれません。

Battle Field by ryecroft21 | Free Listening on SoundCloud

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